2011/02/17

「偶然のチカラ」を読んで考えたこと

きっかけは、「ホンマでっかTV」の一コマだった。

僕はあまり録画してまでテレビは観ないのですが、唯一、「ホンマでっかTV」だけは毎週録画しています。

先週の放送で、環境評論家の武田先生が、「天気予報を見ない生活」について話していました。
予想通りの人生なんてつまらない、と。

天気予報を見ずに過ごすと、時には大雨に打たれてスーツが台無しになったりするけれども、ズブ濡れになった後のお風呂の気持ちよさは格別だし、その後日談が同僚との飲みの席でネタになることもあって、そういった経験が人生に厚みを与えるんだ、という感じの話をしていて、僕はいたく心に響いたのです。

愛読している麻雀漫画「天牌」の登場人物である、黒沢さんも、「本手ばかりでは窮屈だ」と、同じような話をしていたなぁと思わずTwitterでつぶやいたところ、前の会社の営業の先輩から「偶然のチカラ」っていう本が面白いよと勧めていただきました。

その先輩から本を薦めてもらうなんてめったにないので、僕はすぐに楽天ブックスで購入して読みはじめました。

例えばマーフィーのように、ある種神秘的な話につきるのかと思っていたら、「偶然」について、科学的なアプローチと心理学的なアプローチから考えていく面が強くて、かなり論理的なというか、理屈っぽく考えてしまう僕には腑に落ちる内容でした。


突然ですが数学の問題。

裏表のあるコインを2回投げた時に、2回のうち最低1回は表が出る確率はいくつでしょうか?


これは、小中学生が数学の授業で習うテーマです。
答えは75%ですね。
ただ、2分の1の確率で表が出るんだから、2回投げれば1回は表が出るだろ!と思う人の気持ちも分からなくもないかな、と。

いやいや、だって2回とも裏の確率があるじゃん!と強気で答えたあなたに次の問題。


ここに、AとBとCという箱があり、どれか一つには100万円が入っていて、他の二つはハズレだとします。

今、あなたはAという箱を選んだとします。

アタリを知っている司会者が、ハズレであるCの箱を開けて、あなたにこう言いました。
(もしCがアタリならBの箱を開ける。Aがアタリなら、BかCの箱を開ける。)

「今のままAにしますか?それともBに変えますか?」

この時、あなたはどの選択をしますか?

1. 初志貫徹!Aのまま!
2. Bに変えよっかなぁ。
3. 当たる確率は、2分の1なんだから、どっちを選んでも一緒!そのときの気分次第で決めるよ!


さて、ここでちょっと休憩。
読み進めつつ、上の問題に答えを出してくださいね。

この本の序盤は、偶然ということを確率論を中心とした科学的に、かつ、人間の心の動きを元にした心理学的に考えていきます。
人生は決断の連続とはよく言われますが、その決断の結果起こることが偶然と言えるのか、必然だと言えるのか、と。
その問いかけには最後まで答えが無いという話になるのですが、読み進めるうちに、自分がどれだけ正しいと思ってした決断が確率論的に正しくないのかを考えずにはいられないことがままあります。

その、人間の心理が入ると確率論的に合理的でない判断をしてしまうことを説明した上で、確率でも語れない世の中の事象をどう解釈すべきか、自分はどう行動するべきなのかということに焦点を当てていくわけです。

そこにはもちろん、哲学的、宗教的な概念が関わってきますし、自己啓発というか、人生の歩み方的な話に収斂していくわけですね。


てなわけで、さっきの問題の答え考えましたか?
答えが出てから読み進めてくださいね。



いいですか?




先ほどの確率論的な正解は、2.の「Bに変える」です。

Aのまま行った場合と、Bに変えた場合では、Bに変えた方が2倍も100万円が当たる確率が高いのです。

これは僕もびっくりしたとともに、理由が腑に落ちるまで結構時間がかかりました。
だって、直感的には、AかBのどちらかがアタリな訳だから、どっちを選んでも100万円が当たるのは、2分の1の確率だと思いません?

なぜBに変えるべきかを簡単に説明すると、、、

まず、AかBかCの3つの中から一つを選んだ時点で、アタリを引く確率は3分の1です。
この確率は、後の司会者がBかCの箱を開けた後でも、変わりません。

さて、ここで正解を知っている司会者がBかCでハズレの箱を開けてくれます。
それまでは、Bがアタリだった確率もCがアタリだった確率も3分の1ずつでしたが、この瞬間に、BとCのアタリの確率は片方に寄せられることになります。

つまり残ったBかCがアタリの確率は3分の2になるわけです!


昔アメリカで、IQ230の天才少女がこの問題を出された時に、正解は「Bに変える」です、と瞬時に答えたそうです。
当時名だたる数学者が、「残った選択肢AかBが当たる確率はそれぞれ2分の1だろう!」と猛反発をしたそうですが、後にこの天才少女が正しいことが数学的に証明され、名だたる数学者全員が赤っ恥をかいたという逸話付きの話だそうです。

納得行かない人は1万回この実験をしてみると、見事にBに変えた方が約2倍当たるそうですので、是非実験してみてください。


で、何が言いたいかというと、まず人間の感情が合理的な判断を曇らせることが人生にはたくさんあるという話。
先ほどの例で「Aのまま!」と答えた人、要注意ね。
人間は、自分で決めたことは「正しいと思いたい」という心理に陥ることがよくあるそうです。

これは、例えば「コンコルドの誤謬」とか、「一貫性の罠」とかいう話を聞きますね。

合理的に判断しているつもりでも今までの人生経験とか、自分でした決断とか、そういった事柄にどうしても影響を受けてしまうものだそうです。
悪いことが起こると、今までの自分の行いが悪かったのでは?と、つい考えてしまう、とかね。


またまた話がそれますが、本の中では「占い」というものについても結構なページが割かれていて面白いです。
僕は元々占いという非科学的なことに、意外と肯定的な意見でした。(意外かどうかは知らんけど。)
娯楽としても見るし、非科学性にもどこか惹かれるものがあるなぁという感じで。
とはいっても、血液型で人を分けるなんて無理があるとか、血液は性格を司る脳内分野には影響を及ぼせないとか、科学的に批判する意見にも同意する節があったりしたわけです。

動物占いとか、六占星術とか、占いを楽しむこともしつつ、占い師の意見に最初に共感したのは、多分「16歳の教科書」の鏡リュウジさんの話を読んだときだと思う。

確か、高校生だかの頃に、占いにはまって、人のことを占ってたら、なんかよく当たる、と。
論理的に考えたら例えばタロットカードで運勢が分かるなんてあり得ないという考えと、でも実際に占ってみると本当に当たることが多いという現実に、本人も相当悩んだそうです。

この本の中でも、占いというものが昔から時代の統治者にも利用され、今でも一般人の多くに親しまれていることには何らかの意味があるという話が出てきます。

「今では科学的なことでも証明されるまでは非科学的なものだったのだ。」という一言はとても腑に落ちましたね。

占いってのは統計学的な側面も持っているもので、科学的な理由は分からないけれども、なぜかこういう傾向があることが昔から分かっているとか言われると、そういう見解はあり得るかもしれんなぁと思うこともあるわけです、僕としては。


で、話を戻すと。
この本の中では、「できるだけ自分で選択しないように心がけよ」とアドバイスされます。

僕はこれには目から鱗が落ちました。

自分の意志を強くもって、決断していくことが人生を切り拓くことだと今まで信じてきたのに、「なるべく決断するな。」と言われた訳ですから。

ただ、その話の前にいかに自分の決断が自分の過去によって作られたレンズ越しに見ているかとか、自分で決めた決断はなかなか変えづらいとかが説明されているので、妙に納得させられてしまうのです。

もちろん、人生を人任せにすれば良いというわけではないのですが、決断を避けることも必要、という概念は僕には衝撃的でした。
そんなこと言っている自己啓発書って他に読んだこと無いし。


他にも、因果関係だけでは説明できないできごとが世の中にはたくさんあるよ、という話は面白かった。
一つ一つの事柄には原因と結果があるのだけれども、それぞれ関係性が無い事柄がある日突然同時に起こることを説明できる方法は無いのだ、と。

それを理解する一つの方法として、場という概念を考えてみてはどうかと提案しているのですが、これは結構興味深かった。

大学時代に僕が所属していたテニスサークルでは、「カップル保存の法則」という意味不明な法則が代々伝えられていました。
その名の通り、サークル内のカップルの数はなぜか一定数なのだ、と。
あるカップルが別れると、そのうち別のところでカップルができたりする、と。

僕はこれをもう少し発展させて、カップルとか商売の売上とか、そういったことはその場の持つエネルギーの表出なのではないかと勝手に考えていたりします。
例えば、サークルの幹部が変わって雰囲気が良くなったり悪くなったりすると、カップルの数が増えたり減ったりすることがあるよなぁ、と。
雰囲気が良いほどカップルが多いとは一概に言えず、雰囲気が悪いとカップルになってサークルを離脱したりするという、これって超非論理的だし、否定も肯定もできねーよ!という意見が多いと思うのですが、なんかそういう神秘的なことも好きだったりするんですね。

まぁいいや。

あ、でも恋愛絡みでもう一つ。
この本の中で、「例えば急に付き合っている彼氏が冷たくなったときにどうするか?」という話が出てきます。
そして、そういうときはえてして他にも「困ったこと」が起こる、と。
例えば頼んでおいた品物が届かない、とか、家族が病気にかかる、とか、次々に何で重なるの?ということが起こる。
そんな時にどうすべきか?と。

この答えが共感できて、そんなときは「自分に目を向けること」だ、と。
相手をどうにかする前に、目の前に起きている小さな問題たちをきちんと片付けていくことが肝要だと説きます。
これ、賛成。


こんな感じ(どんな?)でいろいろと世の中の事象について考察していくわけですが、とても面白かったです。
身の回りに起こっていることから自分の内面や状況を考え、慌てず騒がず冷静に事に当たることが重要ということでしょうか。


長くなりましたけど、強い意志を持って状況を変えていく力を身につける!というだけでなく、時には状況に身をゆだね、自分が正しいと思っていることに疑問を投げかけてみることも、人生という荒波を渡っていく上では必要なことかもしれないな〜なんて深夜に思いながら、さて寝ますかね。

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