2011/11/19

池田清彦「がんばらない生き方」

大好きなホンマでっか!?TVに出演している池田清彦さんをネットで検索したら、「生きるってのは、身の丈を知ることだ」というインタビュー記事を見つけて読んでみたのです。
テレビで観ている時から池田先生は好きでしたが、やっぱりこの人の考え方好きだなぁと再確認し、本もたくさん出されているみたいなので、4冊衝動買いしました。

まずは「がんばらない生き方」から。

「好きなことで食べていくのは難しいから大部分の人は諦めたほうがいいよ」と、自己啓発、つまり、みんな努力すべし!みたいな風潮とは全く異なる持論を展開します。
そもそも仕事なんてお金を稼ぐための手段だと思ったほうが気が楽で、生きがいなんてのは趣味などに求めるほうが大抵うまくいくんじゃないかな、と池田先生は言っているわけです。
このあたりは上述のリンクからも読めるので一読してみてください。

僕は今の仕事になって特に、仕事をすることが生きがいだったりするわけですが、元々うちは生きていくための仕事としてたまたまご先祖さんがきもの業界を選んだだけで、生きがいとか仕事が好きとかそんなに真剣に考えていなかったと思うんですよねぇ。
江戸時代は身分制度もあったわけで、いくら努力してもある一定のところ以上にはいけないことがほとんどだったと思うのですが、それで今より不幸だったかというと必ずしもそうではないはずで。
前から書いていますけど、自由って結構しんどいんですよ、多分。選ぶことってしんどいから。

と、話がそれた。

一番印象に残っているのは働きアリの話。
働きアリってみんな勤勉だと思っているかもしれないけど、8割は遊んで仕事していないんだよ、と。
人間世界でいう、組織の中の2割が大部分の利益を上げ、残りの6割は普通、2割はお荷物っていうパレートの法則と同じなんだ。
優秀な2割だけを取り出すと、そのなかでやはり8割が怠け出すらしい。
じゃあどうにかして働きものばかりを集めて組織をつくると最強かというとそうでもない、と。
働き者ばかりの集団と、働き者と遊び人が混ざった集団で、危機の時どちらが生き残るかというと、生物学的には後者だそうです。
全員がフルに働く組織はそれだけ余裕がないから、危機に対する余裕や「伸びシロ」がないことも意味する、と。
だから実は怠け者も許容する寛容さが組織には必要なんじゃないか、と説くわけです。
これはなるほどなぁと思ってしまった。
全員が余裕なく働く組織って長く所属するには息が詰まるかもしれないなぁ、と。
とはいえ、だらけた集団になってしまったらそれこそ危機なので、このあたりはどうバランスを取っていくのかは組織のトップの裁量なんでしょうけど。

本の構成としてはエッセイっぽいというか、ひとつのテーマごとに語り口調で進んでいくので、非常に読みやすく、はやりの自己啓発系とは一線を画す、普遍的な視点、それこそ人間が誕生した650万年という時間軸で考えてみたりして、それが今の風潮に感化された僕のレンズ越しには新鮮に映りました。





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