祝着を暖簾に仕立て直す

4月に、とあるご夫婦にご来店いただきました。
まずは、大島のアンサンブルをご主人さん用に仕立て直したいというご要望。
裄が短かったのですが、生地の幅が狭い。
これを着るとすると袖に足し布するしかないのですが、できれば羽織も着たいということだったので、羽織の衿を半巾に裁ち、そこからきものと羽織の足し布を取るしかない。
ざっと見積もって、「うん、多分できます。でも解いて洗い張りしてみないと確実とは言えません。」というお話しをしてお請けしました。

で、さらに難題が。。
そのお客様が産まれたときに使った祝着（を更に5歳用に仕立て直したもの）をなんとか再生させたい、と。
できれば暖簾にしたいのですが、、というお話しでした。
役者をやられているそうで、楽屋にかけるらしいのです。

品物を少し触ってみると、これがまためちゃくちゃ弱い。。。
普通なら絶対お請けできない仕事なのですが、（切れてしまったら責任が取れないので。）お客様のお話を聞いているうちに、「なんとかやってみたい。しかもやったことがない仕事だから仕上がりを僕も見てみたい！」と思って、「最悪切れるかもしれませんが、それでも良ければお請けします。」と言ってお請けしました。



本当は長い丈の暖簾にしたかったのですが、袖の長さ以上に長くできないし、暖簾は縁起物。まさか裁ち目を入れるわけにもいかない。
ということで、袖の長さギリギリで仕立てますというお話で。

解いてみると、古いしみが多々あり、思っていたとおりの弱さ。



ただ、なんとしてもやりたい。

のりを引くときが一番問題なので、なるべく負担がかからないよう短く仕上げるため、身頃、袖、それぞれ細かくやるしかない。
さらに、張り手にかけるときに切れてしまう可能性が高いと思い、切れるとマズイ部分には木綿をかませました。



さらにさらに、こういう品物の場合、紋は後から入れています。
濡れると紋がにじんでしまうのですが、こればっかりはにじませられないので、めちゃくちゃ慎重にノリを引く。



実はちょっと裏ワザも使いました。（普通のきものにはあまりやらない。）



とにかく弱いので、めちゃくちゃ慎重にのりを引く親父。


少しずつ仕上げ、なんとか切れずに洗い張り終了。





で、次は仕立て屋さんとの話し合い。
まず、紋の位置は必ず揃えてほしい。
とにかく弱いので、裏からあて布するしかないのですが、接着芯を使うか羽二重を当てるか。
親父と仕立て屋さんは当初接着芯を推していたのですが、僕は絶対羽二重の方が良いと思いました。
接着芯って丈夫になるんですけど、小じわがついちゃうと取れなくなっちゃうんですよ。
無理やり引っ張ったりしないでしょうし、羽二重をあてる方が質感というか風合いがよく仕上がると思ったのでした。
最も負担のかかる、チのところだけは接着芯を入れました。

で、仕上がった暖簾がこちら。



めっちゃかっこいい！！！

今までこんな仕立直しは初めてです。

今日お客様にご来店いただきまして、暖簾と大島、奥様の夏大島を納めました。
ご来店いただく前にお電話をいただいたので、準備して待っていました。

で、ご来店いただくなり、「どうでした？」と聞かれる。

僕は、「傑作ができました。」と応えました。

で、お見せすると、お客様もめちゃくちゃ喜んでいただきまして。

仕立て直した大島と羽織もその場で羽織っていただき、寸法もピッタリでした。
なにせ、一度寸法を測った後に、ちょっと心配な部分があったので、補正道具持ってもう一度来ていただいたくらいだったので。。

こういったやったことのない仕事にチャレンジするのは大好きです。
ただ、かなりリスクの高い仕事だったので、お客様もそれなりの覚悟を持っていただく必要があるのですが。。

本当に喜んで帰って行かれたお客様の後ろ姿を見ながら、一日ハッピーな気持ちでした。

そのお客様に「今日ブログに書きます！6代目のブログやホームページでも紹介してください！」とおっしゃっていただいたので、その方のブログを見たら更新されていました。

Don't Worry ! Be Happy !　佐野圭亮オフィシャルブログ
http://ameblo.jp/keisuke-sano-keisuke/entry-12041175959.html


うーん、、この仕事してて良かった。。。（嬉