伸子張りの細かい技術はこのブログ読者の人もそれほど興味ないかなと思ってあまり書いてこなかったのですが、ご自分で伸子張りをやられる方もいることが分かり、書いてみてもよいかなと思ったので書いてみます。
胴裏は衿裏やおくみ裏の部分と袖裏の部分で幅が異なる場合があるため、表生地に比べて伸子や張り手を数種類使います。
一番奥の細い部分が衿裏、衿裏の途中から端縫ってある長方形2枚の部分がおくみ裏、写真の左側の一番太い部分が胴裏です。
おくみ裏がつながっていない、衿裏だけの部分を張り手につなげ、おくみ裏の先端から小さい張り手で引っ張ります。
下から見ると↓こんな感じ。
↓おくみ裏(+衿裏)と胴裏も幅が少し違うので、糸で引っ張ります。(糸でつる、と呼ぶ)
伸子をかう部分によって、伸子の種類を変えます。
だるまやで使っている伸子は全部で5種類あり、新しい伸子、古い伸子、弱い伸子、マチ伸子、衿伸子と呼んでいます。
新しい伸子と古い伸子は、太さが太く、使い始めた時期によって分けています。
弱い伸子は、新しい伸子と古い伸子に比べて太さが細いです。こちらは使い始めた時期によって分けていません。
マチ伸子と衿伸子は太さは弱い伸子と同じ太さで、長さが短いです。
胴裏を張るときは、袖裏と胴裏は古い伸子、おくみ裏は弱い伸子、衿裏は衿伸子を使っています。
新しい伸子と古い伸子の違いは、張力というのかな、引っ張る力の違いで、古くなると当然引っ張る力は弱くなってきます。
この2種類の伸子を混ぜて使ってしまうと、新しい伸子をかった部分と古い伸子をかった部分で生地の仕上がる幅が変わってしまうので、同じ反物は同じ種類の伸子を使うようにしています。
紬などはなるべく新しい伸子を使い、胴裏などは古い伸子を使うようにしているわけです。
↓こちらは親父が羽裏にのりを引いている写真。
羽裏はマチの部分が抜けているので、シンモスなどで隙間を埋めるか、↓の写真のように、間を張り手で引っ張るかして、伸子張りを行います。
ちなみにここで使っている張り手をマチ張り手と呼びます。
↓下から見るとこんな感じ。
もう慣れてしまっているので、当たり前のように仕事をしていたのですが、考えてみると細かい技術がいろいろありますね。
お、久しぶりにきものや修行っぽい記事になったぞ、と。(笑)
とんぼです。
返信削除なるほど、糸でつる…こういうワザが
あるのですねぇ。
我が家は庭先ですから、どっちにしても
長くは張れないんですが、
幅の少し違うものは、
こうするといいんですね。
あと羽織はほんとにはぬいも面倒で、
つい敬遠していましたが、
どうせ片身頃ずつしか張れないんですから
別布足すようですね。
つまり、手は抜くなと…。
昔の人に笑われちゃいます。
努力しなくちゃ、です。
>とんぼさん
返信削除コメントありがとうございます。
ご自分ですべてやられるのは大変ですよねぇ。
きものを干して作業をするには、縦長の土地が必要なため、昔は、洗い張りなどきもの関係の仕事をしている家は、「うなぎの寝床」と呼ばれていたらしいです。
これからも細かい技も含めてきもののお手入れについて紹介していこうと思います。