2010/07/06

無地のきものが一番難しいかなぁ

だるまやでは、洗い張りを僕と親父でやっていますが、丸洗い・しみ抜きや染め替えや紋入れも請けますし、新しいきものも売っています。
そんなわけで、仕事の種類が多くて、もう2年経ったものの、まだまだ覚えきれていないです。
(洗い張り職人として一人前になるだけでも10年かかると言われるし。。)

数ある仕事の中でも、最近一番難しいなぁと思っているのが無地のきもの。
そのお客さんにあった色を勧めるというのがそもそも難しい上に、染め替えもできるので活用法がたくさんあるんですよ。
さらに、着ていく場面によってどんな帯と合わせるのが良いかも幅が広いですし。

新しい白生地を染める場合は色を決めるだけなのですが、まずこれがなかなか難しい。
お客さんが選んだ色を元に、お客さんの雰囲気を考えながら、もっと良い色を提案するわけです。
ここが腕の見せどころで、お客さんが最初に選んだ色からかなり変わることもしばしばあります。
うちとしては、お客さんが選んだ色に染めることだけが仕事ではなく、染めて仕立て上がったきものをお客さんが着て行かれたときに、友人の方などに、「あら、いい色ね~」と言ってもらうのが仕事なわけです。
僕はまだまだきものの色彩感覚に慣れていないので、提案しても却下されることが多いのですが、少しずつでも慣れていかねば。

しかし、親父は自分の服とか無頓着なくせに、きものの色彩感覚はめちゃ鋭いんですよねぇ。。
お客さんが考えてもいなかった色を勧めるのに、染め上がってみると大抵満足してもらえるんですよ。
あれ、なんなんだろう。
まぁ本人曰く、「お客さんに色を提案できるようになったのは、ここ数年だぞ」ということらしいですが。

でもってもっと難しいのが、お客さんが無地のきものを染め替えたいと言ってお持ちになった場合。
こちらとしてはかなりたくさんのことを同時に考えているわけです。
生地がどんな状態かをさっと見ながら、お客様の寸法になるかとか、しみはないかとか、紋がついているかとか、そもそも染め替えができるか、とか。

で、染め替えることになったとして、今度は色で悩むわけです。
お客さんが例えば藤色が良いなぁとおっしゃったとして、きものにしみやヤケがある場合はできるだけ目立たなくなるような色を勧めなければならない。
お客さんが希望した色だと薄すぎてしみが隠れなそうな場合にはもう少し濃い目の色を勧めるわけです。
薄い藤色を希望していたお客さんにしみの都合で濃い藤色を勧めると、「それだとちょっと地味ねぇ」という話になって、最終的に芥子色になる、なんてこともあるわけです。

で、色が決まり、紋も入れることになったとしましょう。

染め工場から上がってきた反物にのりを引いて仕上げながら、しみが目立たなくなったかどうかを調べます。
で、もししみが隠しきれなかった場合。

無地のきものは身頃の左と右を入れ替えることが出来るので、どっちを左にするかで悩むわけです。
衿肩あきのどっち側に紋を入れるかを決めないと紋を入れられないので。
しみの場所を確認しながら、こっち側に紋を入れると、このしみは下前に行くから着たときは隠れるな、とかを考えます。

で、紋を入れたあとは、しみの位置を仕立て屋さんに伝えて、隠せるしみはなるべく隠してもらうようにお願いします。

と、こういった過程を経て、やっと無地のきものの染め替えができるのです。

一枚のきものの染め替えにも実はたくさんの物語が起こっていたりするわけです。

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