2018/02/09

僕らの4日間戦争 その6

その6である。
余談ですが、インフルエンザほぼ治りました。笑

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2月2日 15:10
蒸し屋さんについて、「すいません」と言いながら中に入る。
通りかかった男性に、「朝そこで作業されていた職人さん、少しご年配に見える方ってどこにいらっしゃいますか?」と聞くと、「あ〜、あなた、朝来た人ね。今から呼んできてあげるね。」と言われた。

しばらくすると、蒸し屋さんがてくてく歩いてきた。
僕は走って近づいていき、状況を尋ねる。
「いやぁ、まだ蒸し上がらないんですわ。ちょっと状況見てくる。」と言って工場へ入っていった。
開け放たれた扉の後ろで耳を済ませていると、「もう大丈夫」みたいな声が聞こえた。

蒸し屋さんから、「終わるみたいやけど、どうする?持って帰る?」と聞かれ、咄嗟に、「今日お願いできるならお願いします!」と伝えた。
「あ、待つの?わかった。」と言って、てくてくと工場へ戻っていった。

だいたい何時間位かかる作業なのか、すぐに作業に取り掛かれるのかなど、聞きたいことはあったが、手を停めさせてもまずい。

僕は工場の外で歩き回りながら考えていた。

通りがかりの事務職っぽいおばちゃんにちょっと話しかける。
「水洗・乾燥ってだいたい何時間くらいかかりますか?」と聞くと、「どんな品物?あぁ、朝渡してたやつね。あれは糊をふやかして洗って乾燥させてだから、1〜3時間くらいかな。」と言われた。

アバウト!と思いながら、引き続き歩き回りながら考えていた。

「昨日見たここのホームページでの水洗作業と、自分の洗い張りの経験から推測するに、熟練の職人がやるならおそらく30分の作業だ。そこから乾燥部屋に入れて乾燥させるわけだから、うちと環境は似ているはず。いや、うちより乾燥早いだろうから、1時間ってところか。15時10分に渡して、すぐに作業開始してくれていたら、16時半〜17時に終わるんじゃないか?」と予想を立てた。

今日終わらない仕事を受けるはずないから、工場が閉まるまでには終わる予測のはずだと思い、通りかかる人に、「この工場って何時まで作業されてるんですか?」と聞いてみたが、「人それぞれだね〜」みたいな返事しかもらえなかった。
とにかく情報が欲しかった。

30分、1時間、と時間が経過し、16時を回っていた。
通りかかった職人さんが、朝蒸し屋さんと一緒に作業をされている方だ!とピンと来て、トイレから出てくるのを待った。
出てくるなり話しかけ、「お兄さんの勘で良いんですけど、朝のあの反物の水洗乾燥ってどれくらい時間かかりますか?」と聞くと、「そうだな〜、余裕を見て2時間かな。」との返事。
「朝お願いした蒸し屋さんって今何されているかわかりますか?」と聞くと「水洗終わって乾燥させているよ。」とのことだった。

やった!これなら遅くても17時半には終わるはず!!

すぐに17時半までの新幹線の時間と空席状況を確認した。

2月2日(金)16:50
乾燥が終わるのを、歩き回りながら待っている僕。
心なしか余裕が生まれ、桂川の河川敷を見て通り過ぎる電車を見たり、線路の写真を撮ったりしていた。
この風景、一生忘れないぞ、と思っていた。

16時50分頃だったか、知らない顔の人から話しかけられ、「これでしょ?はい。」と反物を手渡された!
僕は「ありがとうございました」を連呼していたが、僕を無視して染め職人さんに電話をしているようだった。「ほんま、こんなん、二度とあかんで。」と電話越しに話していた。

電話している間に、悉皆屋さんの車の後部座席で反物を広げ、染めムラなどが無いことを確認した。

「やった!思ったより良い色に染め上がってる!」

実は、今朝反物を見た瞬間に、こりゃ紺じゃなくて紫だな、という印象だったため、お客さんに正直に電話で伝えていた。
少し落胆していたお客さんだったが、それは仕方がないよね、と納得してくれていたのだ。
蒸す前の印象よりもだいぶ濃く、赤みが和らいでいた。赤っぽさをなくしたいという要望だったので、これなら娘さんも満足してくれるはずだ。

電話が終わるのを待ち、終わった瞬間に、「本当にありがとうございました。これを。」と言って、新横浜で買った焼き菓子の2つ目を渡した。横浜ハーバーである。
「いや、そんなんええから。」と言われたが、受け取ってくれた。
「じゃぁ職人に渡してくるわ。」と笑顔で去っていった。

悉皆屋さんの車に乗り込み、京都駅へ向かった。
途中、染め職人さんから電話がかかってきて、「今受け取りました」と伝えると、「あれ?そうなん。なんやあのおっさん、言うてることちゃうやん。」と隣の電話口から聞こえた。
代わってくれと頼み、「本当にありがとうございました。助かりました。」と伝えた。
「おぅ、良かったな。」と最後の言葉を交わした。

17時00分
京都駅で新横浜までののぞみのチケットをダッシュで買い、17時03分の新幹線に乗るために、ホームへ走った。
2,3分到着が遅れているらしく、まだ新幹線が来ていなかったので、ホームの売店で京都土産を買った。
最後にお客さんに渡したいし、迷惑をかけるうちの仕立て屋さん、従業員にもと思った。

平塚に戻る新幹線の中で、とりあえず最初で最大の難関は突破できた。。。と、少しだけ安堵につつまれていた。



つづく・・・



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